自己破産前に任意売却をするメリット
給与の減少やリストラ、経営不振により住宅ローンの支払いが難しくなったら、「任意売却」は1つの選択肢です。
一方、他にも借金がある場合、「自己破産」の選択肢も検討する方は多いでしょう。
もし、任意売却と自己破産の両方を検討していて、どちらを先に手続きするか迷っているのなら、自己破産前に任意売却をするのがおすすめです。
今回は、自己破産前に任意売却をするメリットを解説します。
1.任意売却後の債務について
任意売却とは、住宅ローンが返済できなくなった場合に、不動産業者を通じて金融機関の同意のもと家を売却することを指します。
一般的に、残債がある住宅を所有者が勝手に売却することはできません。これは主に、金融機関が担保として当該住宅に抵当権を設定しているからです。
しかし、任意売却では、金融機関と不動産業者が交渉の上、抵当権を解除してもらい残債のある住宅を売却するのです。
任意売却をすることにより、金融機関は抵当権を失うものの売却代金等からの返済を受けることができます。他方、所有者は大きな住宅ローンの支払いに悩むことがなくなります。
しかし、任意売却後に残債が残ってしまうことはあります。
この場合、残債は支払わなければいけませんが、金融機関もお金がないことを知っているため、無理のない分割払いで対応してくれることが一般的です(任意売却である程度の残債を返済できたからこそ認めてもらえる措置ともいえます)。
通常の不動産売却の場合は、売却価格の5%程度の諸経費(仲介手数料)を支払わなければいけません。これに対し任意売却の場合は、売却代金から仲介手数料等を差し引くことができるので、お金を先に用意する必要がないのもメリットです。
任意売却の購入者が不動産投資会社である場合や親族である場合は、売却後に賃料を払って住み続ける交渉をすることも可能かもしれません。
2.自己破産前に任意売却を先にするべき理由
自己破産とは、債務整理手続きの1つであり、当該債務者が抱える全ての債務の返済義務を裁判所が免除する手続きのことを指します。
多重債務者を救済するための制度であり、申立てを行い裁判所の許可を受ければ、借金は返済しなくてよくなります。
借金が帳消しになる自己破産をするなら、任意売却をする必要性はないように感じます。
しかし、実際には自己破産前に任意売却をしておく方がメリットは大きくなります。
具体的には、以下のようなメリットです。
- 自己破産をせずに済む可能性がある
- 引越し費用を捻出できる
- 同時廃止になる可能性がある(手続き費用が安くなる・時間の節約になる)
まず、任意売却をすれば残債を完済、あるいは支払える額まで減少させることができる可能性があります。
そうすると、そもそも自己破産の必要性はなくなるでしょう。
[参考記事]
自己破産のメリット・デメリット|破産後の生活はどうなる?
また、破産前に任意売却をしておければ、競売を回避し、引越しの準備も可能です。
競売になると引越し費用も捻出できません。単に自己破産だけをする場合、マイホームのような大きな資産は競売にかけられてしまうため、先に任意売却をしておくことはメリットが大きでしょう。
[参考記事]
競売を取り下げてもらうことはできる?
更に、自宅を任意売却で手放した後、他にめぼしい資産がないという場合には「同時廃止」という手続きになり、自己破産の費用が安くなります。
家などの大きな資産がある場合は「管財事件」扱いとなってしまい、数十万円の手続き費用が追加でかかります。これを節約できるのは大きなメリットです。
同時廃止事件なら、3ヶ月程度で手続きが終了するため、管財事件の半分〜1/3程度の時間で手続きをすることができます。
[参考記事]
自己破産で同時廃止となるケース|同時廃止の流れ・期間・費用は?
以上から、自己破産と任意売却の両方を検討されている場合は、まず任意売却の手続きを進めることがお勧めです。
3.自己破産前に任意売却をするタイミング
最後に、任意売却をするべき時期について見ていきましょう。
(1) 任意売却を検討すべきタイミング
任意売却を検討すべきタイミングは、住宅ローンの支払いが実際に滞ったときです。
多くの方は、家計が困難に陥っても生活の本拠である住宅だけは手放したくないと考え、できるかぎりローンの支払いを継続しようとします。
これが滞るということは、家計は想像以上に苦しいということであり、今後も収入状況等がすぐに良くなるとは考え難いでしょう。
「支払えない」が現実化した段階で専門業者や弁護士に相談すれば、任意売却を手続きするために十分な期間が得られます。
住宅ローンが滞ったら、一度専門家に相談していてください。
[参考記事]
任意売却をするべきケースとタイミング
(2) 任意売却のタイムリミット
任意売却が可能なのは、競売の開札日の前日までです。この日までに金融機関から任意売却の同意を取り付けられない場合は、競売が実行されてしまいます。
もっとも、現実的に考えると開札前日に任意売却を持ちかけてもうまくいく可能性はほぼありません。
そのため、最低でも競売開始決定通知書が届いた段階(滞納から9ヶ月程度)には任意売却の手続きを始めたいところです。
4.任意売却と自己破産を検討中の方は弁護士に相談を
泉総合法律事務所は、これまで多くの債務整理を取り扱ってきた実績のある法律事務所です。自己破産はもちろん、総合的な視点で借金問題解決のために尽力いたします。
任意売却に関しても、任意売却業者と弁護士を別々に探さずとも窓口1つで対応可能です。
借金問題は早期にご相談いただくことで出来ることも多くなります。
手続きだけでなく、これからの生活に対する不安や疑問はたくさんあるでしょう。弁護士がトータルでサポートしますので、まずはお気軽にご相談ください。